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魚種ごとの反応

マダイを追う vol.15

今回はGP-1971Fにトゥルーエコーチャープに対応した送受波器(B150M)を接続して得た探知画像を元に解説していきます。
この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?

マダイを追う vol.15 GPS魚探映像 チャープ方式ではマダイらしき単体魚の反応とラバージグの軌跡も捉えることができました

ボートは風と潮に任せて流すいわゆるドテラ流しとし、ラバージグを使ってマダイを狙ういわゆる"タイラバ"での実釣時にこの魚探画面は撮影(キャプチャー)したものです。

この画像からは以下のような情報が得られます

  • 水深43.1メートル
  • ラバージグの軌跡が映し出されている
  • ラバージグを追うマダイらしき単体魚が映し出されている

チャープ用送受波器から発信する超音波は一つのパルス内で周波数を徐々に変化させ、一定の周期毎に送波するものとなっており、水中にて水と密度が異なるものに反射し、エコーとして送受波器に戻ります。
そのエコーに対してパルス圧縮処理を施すことで、パルス幅が短く、強いエネルギーの超音波を送受したのと同じ効果を得ることができるために高い分解能力を有する魚探画面を得ることが可能となります。

今回の魚探画面では海底から3メートルほどのところに単体魚が映し出されており、リトリーブによって浮上していくラバージグを追ってその単体魚も浮上していく様子が映し出されています。
ラバージグの軌跡の傾斜に対して単体魚の軌跡の傾斜が立っているのは、リトリープによって巻き上げられていくラバージグの速さよりも速いスピードで単体魚がラバージグを追っかけていることを意味しています。
画面では単体魚がラバージグに追い付いている様子までも表示していますが、今回は残念ながらバイト(魚が食いつくこと)までは至りませんでした。

その後、単体魚は翻って海底方向へ潜って行く様子も映し出されています。
魚探画面でこの一部始終を確認していたので、その単体魚がバイトしてくれなかったことが悔しかったのですが、次なる一手としたのはラバージグのリトリーブ(巻き上げ)速さで、先程までよりもやや遅いスピードにて巻き上げるよう心掛けました。
その甲斐あってか、その約10分後には同一ポイントにてマダイをゲット。
先ほどバイトせずに翻って潜行した単体魚がマダイだという確信が持てました。

今回紹介した様な魚がルアーを追うような様子は従来から主流となっている単一周波数(50キロヘルツや200キロヘルツ)でのパルス波による探知結果でも条件次第では捉えることが可能です。
但し、単体魚やルアーが小さかったり、それらによる反射波が弱いと画面に表示されにくくなります。
その点、分解能力が高いチャープ方式では単体魚やラバージグを捉えやすいので、今回のリトリーブ速さの修正のように魚探画面から得られる情報を実釣にフィードバックするうえでも有利となります。

今回、ラバージグを使ったマダイ釣りにおいてはチャープ方式の送受波器を使用することのメリットを実感することができましたが、これが他の釣りものに対して有効だとは言い切れません。
従来の単一周波の魚探なら魚体長を表示するアキュフィッシュ機能や海底底質判別機能などが使えるなど、それぞれにメリット、デメリットがあるので、釣りものごとに両者を試しながら、適材適所を見極めていきたいと思います。

  • マダイを追う vol.15 釣果写真 魚探画面の表示内容からリトリーブスピードを修正することでゲットできた1kg級のマダイです
  • マダイを追う vol.15 水中画像 海底から数メートル浮いた位置を泳いでいるマダイ。その泳層は水温の分布状況によっても変わってきます

水深18メートルほどの険しい岩礁地帯の大きな岩と岩の間で見かけた体長60センチ級のマダイ2尾です。一般的には潮が止まっている時よりも潮が動いている時の方が魚の活性が高く、エサを求めて摂餌行動することが多いことが知られています。
しかしながら、実際には速過ぎる潮流を苦手とする魚も存在するようです。この映像を撮影した時の潮流はとても速く、時速約3ノットで流れていました。それを避けるために一時的に私自身も潮流が緩い岩陰に避難しましたが、その際に出あったのがこの2尾のマダイです。これまでにも潮流が速い時に岩陰に退避するマダイを何度も観ており、普段広々とした海底付近や宙層でマダイを見掛けるときは大抵潮がやや緩い状況の時でした。これらの観察結果から言い切る訳にはいきませんが、マダイに関していえば速過ぎる潮流は苦手ということは、当たらずとも遠からずだと感じています。

著者紹介

友恵丸・友恵丸II 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。

ウェブサイト:気ままな「海のボート釣り」
使用機材:9型ワイド、カラー液晶GPSプロッタ魚探 型式 GP-1971F