魚種ごとの反応
この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?
宙層に映し出された魚群反応は密度の濃い場所と薄い場所が存在する。近くに天敵となる魚が存在する可能性大だ
ボートはスパンカーを使って船速0.2ノット程度でゆっくり流しながら撮影(画面キャプチャー)したもので、魚探から発信する超音波の周波数は画面左側が50キロヘルツ、右が200キロヘルツで海中を探知した反応画像となっています。
マダイは古くから祝い事の席に出される日本人とは深い関わりのある魚であり、一年のうちでもとりわけ正月には一層ニーズが高まり、貴重な魚として扱われる魚の代表格です。
今回は正月用のマダイゲットに向け、この時期ならではの浅場の攻略について紹介します。
マダイは季節とともに変わりゆく水温変化に応じて生息する水深を変えていく魚であり、釣行する時期に応じた水深ならびに生息ポイントを攻められるかどうかが勝負の分かれ目となります。
水温が低くなる時期には比較的水温が安定している深い場所を好むので、夏場よりも深い場所を攻めることが一般的なマダイ狙いのポイント選定基準となります。
しかしながらその一方で、冬場でもマダイが浅場に分布する特殊な例も存在します。それはマダイが好んで捕食するイワシなどのベイトフィッシュが接岸している時に起こりうる現象で、たとえ水温が低くても浅場に残り、活発に捕食行動を行なう期間限定のチャンス時期となります。
GPS魚探画面は12月中旬にキャプチャ(撮影)したものであり、水深は約17メートル。当日の表層水温は13℃でした。
宙層から上層にかけて映っている大きな魚群がウルメイワシの反応で、この画面内にも「マダイが存在する」と推測可能な情報が多く盛り込まれています。
一つテンヤ釣法やタイラバ釣法は通常、海底付近を重点的に攻めることになりますが、この画像のようにウルメイワシの大群に遭遇した場合には海底付近を狙うのではなく、そのベイト反応が出ているタナ付近を重点的に狙うのが有効です。
その場合にはそのベイトフィッシュの遊泳層の中をテンヤやジグがゆっくり通過するように演出することが大切です。
スキューバダイビングでマダイの捕食行動を確認すると、常にベイトフィッシュを追い回しているのではなく、追った後は少し離れて、ベイトフィッシュ達に安心感を与え、再び襲いかかる…を繰り返します。
その状況を船上に居ながらにして確認するのは困難ですが、一つの目安として有効なのは魚群反応の密度の均一性のチェックです。
魚群反応が一様な濃度だった場合は天敵から襲われる心配がなく、安心してのんびり泳いでいる状況です。
逆に反応の密度が濃い部分と淡い部分があり、不均一な場合には天敵の存在により逃げ回っている状況にあると推測できます。
これまでベイトフィッシュの魚群についているマダイを仕留めた時は必ずといっていいほど魚群反応が不均一な状態だったので、この推測はあたらずとも遠からずだと確信しています。
ヒット直後のベイトフィッシュの反応密度のチェック、是非ともやってみて下さい。
今後の仕掛けを下ろすべき魚群とそうでない魚群の判断を行ううえで有効な情報が得られるはずです。
水深18メートルほどの険しい岩礁地帯の大きな岩と岩の間で見かけた体長60センチ級のマダイ2尾です。一般的には潮が止まっている時よりも潮が動いている時の方が魚の活性が高く、エサを求めて摂餌行動することが多いことが知られています。
しかしながら、実際には速過ぎる潮流を苦手とする魚も存在するようです。この映像を撮影した時の潮流はとても速く、時速約3ノットで流れていました。それを避けるために一時的に私自身も潮流が緩い岩陰に避難しましたが、その際に出あったのがこの2尾のマダイです。これまでにも潮流が速い時に岩陰に退避するマダイを何度も観ており、普段広々とした海底付近や宙層でマダイを見掛けるときは大抵潮がやや緩い状況の時でした。これらの観察結果から言い切る訳にはいきませんが、マダイに関していえば速過ぎる潮流は苦手ということは、当たらずとも遠からずだと感じています。
FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター
北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。
ウェブサイト:気ままな「海のボート釣り」
使用機材:9型ワイド、カラー液晶GPSプロッタ魚探 型式 GP-1971F