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魚種ごとの反応

マアジを追う vol.2

この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?

マアジを追う vol.2 魚探映像 マアジの反応は岩礁から少し離れているのが特徴。状況によっては険しい岩礁を避け、平根周りを攻めた方が釣りやすい場合もあります

ボートはシーアンカーを使って約0.5ノット程度でゆっくり流しながら撮影したもので、魚探から発信する超音波の周波数は200キロヘルツで海中を探知した反応画像となっています。

この画像からは以下のような情報が得られます

  • 水深52.8メートル
  • 画面左側の海底ラインは表示色が赤色、画面右側は表示色が赤茶色
  • 画面左側の方が画面右側よりも尾引きがやや長い
  • 画面の左側も右側も、海底にあまり凹凸が存在しない
  • 画面左側には海底に近い位置に魚群反応が、画面右側には海底から7~10メートルほど上に魚群反応が映っている

この釣り場で釣れた魚はマアジです。マアジは水中画像にもあるように群れを形成して泳ぐ魚で、潮通しのいい岩礁周りを好んで生息しています。

今回の魚探画面は、前述したように非常にゆっくりした船速にて撮影したので、画面の表示情報が横方向に"間延び"して表現され、海底に凹凸があっても目立たなくなっています。
参照:魚探の仕組み「停船中の魚群反応」

画面左側は尾引きが(画面右側と比較すると)やや長いので、底質が岩礁と推測しやすいのですが、問題は画面右側です。尾引きが(画面左側と比較すると)やや短く、海底もフラット(平坦)なので底質が「砂かな?」と推測されやすいのですが、それは大きな間違いです。

海底部分の表示色に注目しましょう。画面左側は表示色が赤色なのに対し、画面右側は赤茶色で表現されています。これは超音波の反射強度が画面左側よりも右側の方が強いことを意味しています。

実はこの場所の海底には平根と呼ばれる平らな岩礁が広がっていたのです。凹凸が険しい岩礁帯よりも平根の方が「尾引きは短いけど、反射強度が強く」表現されることが多いのです。

この魚探画像では左側の岩礁帯付近ではアマジが釣れたものの、付けエサのタナを下げるとネンブツダイが釣れました。つまり、岩礁上の反応は1魚種の反応に見えても実際には上側にマアジ、下側にネンブツダイが居たようです。

水中画像は別のポイントにて撮影したものですが、上側の魚群はマアジですが、下側はネンブツダイであり、魚探画像と同じ様な状況です。

なお、アマジは回遊する魚なので岩礁にまとわり着くのではなく、数メートル離れたところを泳ぎ回るのが一般的です。ボートが流れて画面右側の平根部分に差し掛かってからの方が、外道が掛からなくなり、マアジは釣りやすくなりました。

高根周りを攻めるというアジ狙いの鉄則も状況によっては高根から外した平根ポイントの方が釣りやすい場合があるという1例です。

  • マアジを追う vol.2 釣果写真 日本人の食卓に最も馴染み深い魚、マアジ。刺身、塩焼き、干物など何にしても美味しく召し上がれる人気が高い魚です。
  • マアジを追う vol.2 水中画像 岩礁付近に集まったマアジの魚群ですが、画像をよく見ると、画像の左下に映っているのはマアジではなくネンブツダイです。マアジの群れは岩礁から数メートル離れて泳ぎ回る傾向にあります。

この映像は水深20メートルほどの海中で撮影したもので、ブロック漁礁周りで見かけた体長20センチ弱のマアジの群れです。画面の左側から右側へ潮が流れていることが浮遊物の動きからもおわかり頂けると思います。
この漁礁にはマアジ以外にも多くの魚種が集まってきており、その代表格がネンブツダイになります。マアジがブロック漁礁から2~3メートル上側へ離れたところに群れているのに対し、ネンブツダイは漁礁にまとわりつく様に群れています。
ボート上から魚探画面でこの状況を確認すると、マアジとネンブツダイの群れを分離できないことが多くあります。サビキ仕掛けを降下させて、オモリ着底と同時に食ってくるネンブツダイを鈴なりに釣り上げ、「なんだ、マアジの群れじゃなかったんだ!」と言って、ポイントを移動してしまうことがあります。
そうする前に仕掛けを降下させるタナを数メートル上で止めてみましょう。先ほどとは違ってマアジが鈴なりに釣れ上がることもよくあります

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。