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魚種ごとの反応

カワハギを追う vol.8

この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?

カワハギを追う vol.8 GPS魚探映像 根際の砂地はカワハギの好ポイント。魚の反応が映っていなくても一度は仕掛けを降ろしてみることをオススメします

ボートは時速2ノットほどの船速で走らせている最中に魚探画面をキャプチャ(撮影)しました。魚探から発信する超音波の周波数は画面左側が周波数の50キロヘルツ、右が200キロヘルツで海中を探知した反応画像となっています。

この画像からは以下のような情報が得られます

  • 水深17メートル
  • 海底底質がRCKS(岩)→GRVL(礫)→SAND(砂)と変化している
  • 海底に高低差2メートルほどのRCKS(岩)部分がある

この画面画像はカワハギ狙いのポイント付近でキャプチャしたものです。
カワハギは初夏から盛夏にかけては水深5メートルほどの浅場にも多く分布し、秋が深まり水温が下がり始めるとやや深い水深へと棲息場所を移していきます。

カワハギが好む海底地形と底質は主に砂地に根が点在するような場所であり、魚探でもポイント探しは比較的容易です。
砂地においては砂の中に棲息するゴカイ、貝類を、岩礁地帯ではウニ、甲殻類など様々な小動物を食べます。
カワハギ以外の魚では潮上方向へ向いて口をパクパクさせながら潮流に乗って流れてくるプランクトン類を食べるものも多く存在しますが、カワハギは砂地や岩礁地帯で自らエサを探し求めています。
前述したように海底や岩礁にへばり付くように行動しているので魚探でカワハギ自体をキャッチすることは難しく、さらにその反応表示から魚種をカワハギだと断定するのはほぼ困難です。 但し、カワハギが海底付近を離れ、数メートル浮上することがない訳ではありません。例えば、釣り人が垂らした仕掛け(エサ)に興味を示して浮上したり、捕食対象となる越前クラゲなどが宙層に存在すればそれらを捕食するために浮上することもあります。

今回紹介する魚探画面はカワハギが棲息する近くで度々表示される反応事例になります。画像では2周波表示のそれぞれにおいて画面左寄りの部分の海底底質がRCKS(岩)となっています。そして海底ラインがRCKS(岩)部分からSAND(砂)部分にかけて高低差で2メートルほど水深が深くなっていることが画面画像から判断できます。
ここで注目して欲しい点がRCKS(岩)部分の海底ラインが海水との境界部分の他にも約2メートル下側にも淡い海底ラインが表示されている点です。
実はこの画像のように時間軸(横方向)の同じタイミングで濃い海底ラインと淡い海底ラインが生じているというのはその様に表示するための理由が海中景観に在るためです。
わかりやすくするために海中の探知範囲を模式的に円錐で表現しました。(下図参照)

カワハギを追う vol.8 淡い海底ラインがある場合
図:海中の探知範囲

この円錐内の海底部分の約半分の部分がGRVL(礫)で、もう半分くらいの部分が高さ2メートルほどのRCKS(岩)の場合に、今回の画面画像のように濃い海底ラインと淡い海底ラインの2つを表示することになります。このことを理解した上で、魚探画面をチェックすれば、水中の様子を推測する精度が高まっていきます。

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水深16メートルの根際の砂地で撮影したカワハギです。サイズは25センチ弱で、砂地にて単独で摂餌行動していました。
映像でも分かるようにカワハギの摂餌は泳ぎ回りながら行うのではなく、ホバリングと言って停まった状態で行います。それはカワハギが自然界で摂餌するもの(貝類や甲殻類、ゴカイなど)の多くが、普段はジッとしているものが多いためです。摂餌対象が海底の砂の中に棲息している場合には、口に含んだ海水を強く吹き出すことで砂を避け、それらを見つけます。ホバリングでは尾ビレは使わず、第2背ビレと尻ビレそして胸ビレを上手に使って身体を安定させます。岩や海藻に付いている甲殻類を摂餌する時には普段の泳ぐときと同じ姿勢で摂餌しますが、砂の中のエサを摂る時には映像の様に逆立ちするような姿勢になります。

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。