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魚種ごとの反応

カワハギを追う

寄り場を探す

カワハギを追う

カワハギは本州全域の沿岸、水深5~70メートルの岩礁帯と、その周りの砂泥地に生息している。成魚は縄張りを作って生活するため、群れを形成せず、単独で行動することが多い。スキューバダイビングでカワハギを観察すると、確かに1~2尾で行動しているものがほとんどだ。ところがダイビング中に海底の砂を巻き上げたりすると、どこからともなくカワハギが寄ってきて、先ほどまでの縄張り争いはどこへやら、皆一斉にエサを探し始める。水温が高い夏場は水深5~25メートルの浅場の砂地から根周りまで広く分布し、シロギス釣りの最中にもポツポツと交じる。しかし夏のカワハギは底にもいれば宙層にも浮き、魚探で反応を絞り込むのは難しい。したがってポイント探しは魚の反応を追うよりも、魚探に映し出された「海底地形」をじっくりと観察し、生息していそうな岩礁帯とその周りの砂地に見当をつけて探るほうがいい。水温が下がる冬場は水深30~50メートルの岩礁帯付近が狙い目。過ごしやすい水温とエサ場を求めて移動するため、冬場は一定の水深付近に集まる傾向がある。こうなると魚探で、海底付近に映る「数尾のカワハギ」をキャッチできる可能性もある。魚探反応だけでカワハギと断定するのはなかなか難しいが、最終的には仕掛けを投入して釣ってみてはじめて、推測が確信へ変わることになる。

狭い範囲に集う冬場はカワハギが映る!?

カワハギを追う 根と砂地の境目。さらに「根際」を泳いでいたカワハギ

画像は魚探から発振する周波数が異なる2つの超音波を、同時にディスプレイに表示する機能「2周波併記モード」の状態で撮影したもの。画面左が周波数50キロヘルツ、右が200キロヘルツによる表示となっている。

魚探に映し出される水中の様子は、「最新情報がディスプレイの右端1列に表示され、ゆっくり左側へスクロール」する。この画像ではご覧のとおり画面左側に岩礁帯があり、右側はほぼ平らな砂地となっている。要するにボートを岩礁帯から砂地の方へゆっくり流し、ボートが岩礁帯から外れて砂地に入ったタイミングでカメラのシャッターを切ったものである。このポイントでは、ボートが岩礁帯の上を流れているときにネンブツダイやスズメダイが掛かり、砂地との境目付近にてササノハベラやトラギス、そして本命カワハギが釣れた。つまり岩礁帯の上側に映っている魚群反応がネンブツダイやスズメダイと推測できる。一方、岩礁帯と砂地の境目付近には、魚群や単体魚らしき反応が入り交じっている。カワハギの反応もこれらの中に含まれているかも知れないが、コレがカワハギの反応だ!という確証はなかなか持てない。このあたりが前述したとおり、海底地形から生息ポイントを推測せざるを得ない理由だ。ほかカワハギが生息する好ポイントはここで紹介した根際の砂地以外に、代表的なポイントとして「平根」が存在する。平根とは根の高さに対して底面積が大きく、全体として平べったく見える岩礁帯のことで、ダイビング中にも、平根の上面に付着する貝類などをついばむカワハギを多く確認できた。外道が掛かりやすい(というか当たり前)カワハギ釣りだが、自分の判断で仕掛けを下ろしたポイントで本命が手にできると本当にうれしい。

記事:小野信昭さん 協力:隔週刊つり情報

水深16メートルの根際の砂地で撮影したカワハギです。サイズは25センチ弱で、砂地にて単独で摂餌行動していました。
映像でも分かるようにカワハギの摂餌は泳ぎ回りながら行うのではなく、ホバリングと言って停まった状態で行います。それはカワハギが自然界で摂餌するもの(貝類や甲殻類、ゴカイなど)の多くが、普段はジッとしているものが多いためです。摂餌対象が海底の砂の中に棲息している場合には、口に含んだ海水を強く吹き出すことで砂を避け、それらを見つけます。ホバリングでは尾ビレは使わず、第2背ビレと尻ビレそして胸ビレを上手に使って身体を安定させます。岩や海藻に付いている甲殻類を摂餌する時には普段の泳ぐときと同じ姿勢で摂餌しますが、砂の中のエサを摂る時には映像の様に逆立ちするような姿勢になります。

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。