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魚種ごとの反応

カンパチを追う vol.4

この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?

カンパチを追う vol.4 GPS魚探映像 カンパチのポイント探しは海底地形とベイトフィッシュの存在によって推測する

この画像からは以下のような情報が得られます

  • 水深9.9メートル
  • 高低差6メートルほどの高根がある
  • 海底底質は岩である
  • 高根周辺には魚群反応がある

この魚探画面は、ボートを潮流に乗せて約0.2ノットの船速にて流しながら撮影(画面キャプチャー)したものです。魚探から発信する超音波の周波数は50キロヘルツと200キロヘルツで、それぞれ画面の左側と右側に示してあります。

この画面はカンパチ釣りの最中に撮影したものです。
カンパチのポイント探しは好んで捕食するアジやイサキが集まっている場所を見つけることがその第一歩となります。
アジやイサキは潮通しがいい高根周りに集まる習性があり、この魚探画面を撮影した場所がまさしくその高根付近でした。
水深約15メートルの岩礁地帯で高さ6メートルほどの高根の頂上に向かってボートが流されることで魚探画面の海底ラインが右上がりの傾斜となって表示されています。その傾斜の途中に魚群反応が映し出されていますが、これは潮が高根に当たることで、流れ方に変化が生じ、流れてきたプランクトン類が一時的に滞留するので、それらを求めて集まった様々な小魚やアジ、イサキを魚群探知機が捉え、魚群反応として表示したものです。さらにこれらの魚達を求めてカンパチやマダイなどの大型魚が付近に集まることになります。
一般的には高根に対して潮オモテ(潮がぶつかる)側に魚が集まる傾向があるので、魚探画面に映った右肩上がりの傾斜側が潮オモテと推測できます。
但し、スキューバダイビングにて観察すると、潮流があまりにも速い場合には、潮ウラ(潮がぶつからない側)に魚が退避し、捕食活動の時のみ潮オモテへ回遊の範囲を広げることがあることも確認できました。
いずれにしても、海中にそびえ立つような高根周りは多くの魚が集まる好条件の場所となるので魚群探知機にて釣り場を探し出す際の有効な手がかりとなります。

ボートを潮流に乗せて流しながらカンパチをねらうには、高根から大きく外れるとヒット率が下がるので、再び潮上へ遡上し、ボートを流し直す必要があります。
カンパチねらいの釣法としては、生きた小魚をハリに付けて泳がせる「泳がせ釣り」や、逃げ惑う小魚を真似たアクションをルアーに与える「ジギング」があります。
いずれの釣法でも高根周りでは根掛かりが発生しやすくなるので、アタリを待つ間だけでなく、ヒットした後でもヤリトリの最中にラインを根に巻かれることがないようにすることが大切で、魚探にて常に水深変化と海底地形を確認し続ける必要があります。なお、その場合には、超音波の指向角が狭い高周波(200キロヘルツ)側の表示情報をメインに判断することが根掛かりを未然に防ぐうえでもより有効な情報となります。

  • カンパチを追う vol.4 釣果写真 カンパチは泳がせ釣り、ジギングなど様々な釣法でねらえる人気ターゲットのひとつだ
  • カンパチを追う vol.4 水中画像 高根周りに着くベイトフィッシュ(小型のイサキ)に襲い掛かるカンパチの群れ

カンパチは体長1メートルを超えるような大型のものでは単独行動する場合もありますが、1メートル以下のものの多くはこの映像のように群れで行動しています。根周りに群れているアジやイサキを捕食しますが、その際にカンパチの群れはワンチームとなって行動します。
この映像では高根の上側に小型のイサキが多数群れていて、画面向かって左側の潮上方向を一様に向いて泳いでいます。ワンチームとなったカンパチ5尾は画面右側(潮下側)からイサキに襲い掛かっています。実はこの映像撮影時以外にも襲い掛かる場面を何時も観察していますが、そのほとんどが背後(潮下方向)からでした。一般的には魚の視野は広いので、背後から襲い掛かったとしてもイサキに気づかれているのかもしれませんが、潮流に逆らって逃げざるをえなくするために潮下方向から襲い掛かっているのかもしれません。真実を知りたいですね。興味が尽きません。

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。