魚種ごとの反応
魚群探知機は水中カメラのように海中の実写映像を映し出す装置ではなく、発振した超音波が戻ってくるまでの時間を画面上に点(ドット)で表現する装置に過ぎない。つまり、魚探に反応が映し出されたとしても、それがイサキだと断定することは難しく、推測の域を出ない。
反応の正体を確認するには、「イサキ釣りの場合は水深が比較的浅いので、まずは仕掛けを下ろしてみるのが一番!」と〈イサキ1〉で紹介した。ここで注意してほしいのは、タナ取りは海面から行い、降下させた仕掛けは海底まで下ろさないようにすることだ。コマセカゴを海底まで沈めてしまうと、海底付近についている「エサ取り」といわれる別の魚たちがコマセにつられて上昇し、付けエサまで食われてしまう可能性があるためだ。この正確なタナ取りを実現するために、魚群を有効活用するのである。
下図をご覧いただきながら、読み進んでいただきたい。
その決め手は、ボートに設置した送受波器(振動子)の近くから仕掛けを下ろし、海中への仕掛けの降下が「送受波器から発振される超音波の指向角の範囲内」に収まっているようにすることだ。こうすることで魚探画面には魚群反応と自分が下ろした仕掛け(コマセカゴ)の両方が同時に映し出され、両者の位置関係が正確な情報として把握できるようになる。
なぜこんなにも正確なタナ取りが必要なのか?というと、海中には水深によって潮流の方向や速さが異なる、いわゆる二枚潮や三枚潮といわれる現象が生じていることがあり、海中の仕掛けが吹け上がったり、ダラーッと垂れ下がったりと様々な状態が発生するからだ。ボート上から目線で確認できるのは表層の潮流だけで、イサキが泳ぐ宙層の潮流を把握するのは至難の業である。
タナ取りの手順としては、
以上を繰り返して、アタリが出る位置までタナを下へと探っていくのだ。
この過程でイサキが釣れればしめたもの。以降の投入ではそのタナより仕掛けを下ろさないよう魚探画面を見ながら注意すればいい。食いが上々ならば、ここからイサキが浮き上がってくるように少しずつタナを上げ、上へ上へと誘導しながら釣る。結果、食いダナも上昇して、手返しも早くなる。このようにイサキの活性が高いと、コマセの効果で群れの泳層をコントロールすることが可能だ。その一部始終を魚探で確認しながら行えば、効率よく釣りが楽しめる。ただし、この一連のアクションを行うには、ボートの操船技術が伴わなければならない。イサキらしき反応を見つけたら、その真上にボートを停止し、潮流や風の影響でボートがどの方向に流れていくかを把握する。仕掛け投入からタナ取りまでに要する時間と、その間にボートが流れる距離を考慮した位置にボートを移動させ、的確に仕掛けを投入する。
ちなみに、釣り船と同様のスパンカーを装備し、船首が風に振り回されないボートであれば、エンジンによる推進力を微速調整することで潮流に乗せてボートを流すことが可能。より正確にタナ取りができる。魚探を利用したイサキ攻略術、ぜひお試しを。釣果がグーンとのびるはずだ。
記事:小野信昭さん 協力:隔週刊つり情報
水深20メートル前後の岩礁周りで撮影したイサキの群れです。サイズは概ね25センチで、群れ全体が画面の右から左の方へゆっくり移動している最中です。
イサキは群れで行動するので魚群探知機でも捉えやすい魚の1つです。特にこの映像の様に大きな群れの場合にはボートを走らせながらでも魚群を発見しやすいのですが、発見直後に停船しようとしてもボートは惰性で動き続け、魚群を通り過ぎてからようやく停船となりがちです。GPSの航跡を頼りに魚群発見位置まで速やかに戻ってみても魚探画面には先ほどの魚群反応が映らないことも多々あります。その原因の一つはこの映像のように群れが移動していってしまった場合です。釣り場決定の最終段階になったら、停船しやすい船速(3ノット以下)で反応を探した方が結果的に早く群れに辿り着けます。
FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター
北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。