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魚種ごとの反応

青物を追う vol.5

今回はGP-1971Fにトゥルーエコーチャープに対応した送受波器(B150M)を接続して得た探知画像を元に解説していきます。
この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?

青物を追う vol.5 魚探映像 チャープ方式では高い分解能力を有するので魚群内の個体の動きもある程度把握できる点が魅力です

時速1.5ノット程度の船速でボートを進めながら画面を撮影(キャプチャー)したものです。

この画像からは以下のような情報が得られます

  • 水深28.7メートル
  • 海底底質の砂泥から岩礁方向へボートは進んでいる
  • 根の頂上付近に魚群反応がある
  • Aスコープによりボート直下の魚群が確認できる

この日はSLJ(スーパーライトジギング)で青物を狙うためにボートを浮かべました。
実釣するためのポイント探しでは青物の捕食対象となるベイトフィッシュの魚群を探しました。
宙層にイワシの魚群を見つけることができなかったので探索はもっぱら海底付近の高根に付いたアジの魚群反応を中心に探しました。

魚探画面に映し出された海底ラインの下側に伸びる”尾引き”の長さはエコー強度を意味しており、尾引きが短ければ超音波が反射しにくい軟らかな海底(砂や泥)だと判断でき、尾引が長いと反射しやすい硬い海底(岩)だと判断できます。
この画面画像の尾引きからは軟らかな海底から硬い海底の方へ向かってボートが進んだことがわかります。
また、硬い海底になるとともに水深が急速に浅くなってきているのでその海底起伏が高根である可能性が高くなります。
潮通しがいい高根の頂上付近にはプランクトンが滞留しやすく、それらを求めて小魚が集まります。
この画面画像にもアジらしき魚群反応が映し出されています。

ここで注目して頂きたいのは魚群反応が途中で、一旦、途絶えてしまっているという点です。
アジなどの小魚にとって天敵となる大型の青物などが魚群に襲い掛かった時にこのように魚群が一旦途絶える現象が発生します。
スキューバダイビングで青物の捕食行動を実際に観察してみると、ベイトフィッシュを常時追い回しているのではなく、襲い掛かった後はしばらくベイトフィッシュから離れることで安心させ、散らばったベイトフィッシュが再び集まったところで再度襲い掛かるということを繰り返すことを確認しました。

この画面でも魚群反応が一旦途絶えているので大型青物が回遊していると信じることができ、ジャークを繰り返すことでブリ(イナダ級)を釣ることができました。
チャープ方式では高い分解能力を有する魚探画面を得ることが可能となるので、アジらしき魚群反応においても、反応内の個体の動きもある程度把握することが可能となります。
ベイトフィッシュの群れの密度が均一なのか、不均一なのか? 群れが途絶えているのか? 見極めるうえでもチャープ方式の送受波器を使用することのメリットを感じることができました。

  • 青物を追う vol.5 釣果画像 40センチ級のブリを関東ではイナダ、関西ではハマチと呼びます。このサイズでも青物ならではの強い引きを楽しめます
  • 青物を追う vol.5 水中画像 ブリ(イナダ級)は常時ベイトフィッシュを追い回すのではなく、タイミングを見計らって襲い掛かる傾向があります

キビナゴの群れの近くに現れたブリの群れの映像です。サイズは50センチ級であり、関東ではイナダ、関西ではハマチと呼ばれるものです。
ブリは主に小魚やイカ類を捕食しますが、今回は捕食行動を確認することができませんでした。ブリが既に満腹だったのか? あるいは近くにダイバーが存在していたので警戒したのか?・・・捕食しなかった理由は不明です。
一方、キビナゴの群れは泳ぎ方が不規則で、大慌てしているように見えました。ブリが捕食行動しなくても、近くに存在しているだけでキビナゴにとっては大きなプレッシャーになっているのかもしれません。そういった意味でもブリへのアプローチ方法として魚群探知機を活用するにはキビナゴ等のベイトフィッシュとなりうる小魚の群れが不規則な動き方をしていたり、群れの密集度にムラがあるような状況をチェックすることが大切です。

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。