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魚種ごとの反応

青物を追う vol.1

青物と宙層の反応

青物を追う vol.1 海面下30~40メートルを青物らしき群れが移動していった

回遊魚の泳層はその日その時の海況や、魚の活性、捕食するエサの泳層などによって変化する。前回釣れたときと同じタナを攻めたからといって、必ず釣れる保証はないわけだ。

コマセを用いる釣法なら、コマセによって回遊魚の泳層をある程度コントロールできるが、コマセを用いない釣法では泳層の把握が釣果を大きく左右する。
泳がせ釣りやジギングがその代表例だが、ボートフィッシングにおいてはその泳層を把握するために魚探が不可欠となる。

魚探画像は2周波併記モードの状態で、画面左が周波数50キロヘルツ、右が200キロヘルツでの表示だ。
右側画面(200キロヘルツ側)では、リールの巻き上げに伴うビシカゴの軌跡が右上がりの線となって表現されている。この画面は、海底近くでコマセを振り出した直後にふと魚探に目を向けたとき、画面宙層付近に青物らしき回遊魚の反応が現れたので慌てて撮影したものである。
このとき竿はロッドホルダーに預け、電動リールの巻き上げをオンにしたのでこのようなビシカゴの軌跡が映った。

こうした宙層の反応に気づいて、巻き上げた仕掛けをその泳層に合わせてアタリを待つ・・・という手順を踏む人も多いだろうが、うまくいくときもあれば、アタリすらないときもある。
というのも魚探画面で回遊魚に反応を確認してから付けエサのタナに合せても、すでに魚群が通過した後となってしまうことが多々あるためだ。

周波数の違いによる魚群反応の映り方の違いにも注目してほしい。右側画面(200キロヘルツ側)では魚群反応の横幅が狭く、左側画面(50キロヘルツ側)では魚群反応の横幅が長くなっている。
これは海中の探知範囲(超音波の発振指向角)が異なるためだ。200キロヘルツのほうは指向角が狭いので回遊魚が通過に要する時間が短く、50キロヘルツのほうは指向角が広いので通過に要する時間が長くなる。この指向角の通過に要する時間により、同じ魚群でも両画面で大きさが異なって表現される。

移動中の魚群狙いはスピードが決めて

青物を追う vol.1 タカベを補食しようとするブリ

青物類の最高速はマグロ類が時速80~90キロ、カツオは60キロ、サバが30キロくらいといわれており、超音波の指向角の範囲などアッという間に通過してしまう。例えば50キロヘルツの指向角が60度だとして、海面下30メートルをカツオが全力で通過したら、わずか2秒で指向角内を通過することになる。

実際には単体でなく複数尾、あるいはかなり大きな魚群を形成して回遊していること、そして常に全速力で泳いでいるわけではないこと・・・などの理由によって、魚探でも捉えることができるのだ。

水中画像はスキューバーダイビングで撮影したもの。ブリの回遊によって高根付近に群れていたタカベが大慌てで逃げだす瞬間である。このときブリの泳ぎはゆっくりで、必死に逃げようとするタカベのほうが動きは速かった。

興味深かったのは、ゆっくり泳いで通過していったブリと同一と思われる1尾が数分後、再びそのポイントに現れたこと。しかも泳層が1回目のときよりも少し深くなっていた。

タカベの警戒心を弱めるために、ポジションを少しずつ変えながらにじり寄ろうとしているのか・・・理由は定かではない。
ボートフィッシングで宙層の青物を狙うときは、

  • マメに魚探をチェック
  • 速やかに投入
  • 機敏なタナ変更

忙しいが、以上を心がけながらアタリを待ってみることだ。

記事:小野信昭さん 協力:隔週刊つり情報

ブリは成長過程で呼び名が変わっていく出世魚で、この映像に写っているものは関東ではワラサ、関西ではメジロと呼ばれる70センチ級のサイズのものです。主に小魚やイカ類を捕食するので、生きエサを使った泳がせ釣りやルアー(疑似エサ)を使った釣りが盛んに行われている人気のターゲットです。
この映像ではブリは2尾しか写っていませんが、撮影直前に20尾ほどの群れで現れ、この2尾を残して他のものはあっという間に去って行ってしまいました。この高根周りにはイサキが数多く群れていましたが、ブリは捕食行動せずに去って行きました。まだ空腹ではなかったのか?あるいは、群れていたイサキのサイズが大きめだったために捕食を諦めたのか?本当の理由は分かりません。魚群探知機のアキュフィッシュ機能を使って高根周りに群れる魚の体長を掴むことができれば捕食対象になり得る魚か否かを判断する指針になるでしょう。

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。