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魚種ごとの反応

カタクチイワシを追う vol.1

魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?

カタクチイワシを追う vol.1 GPS魚探映像 2つの魚群反応の正体はカタクチイワシです

風は無く、潮流のみの影響を受けながらボートは時速0.2ノット程度のスピードで流れました。海中を探知した超音波の周波数は200キロヘルツです。

この画像からは以下のような情報が得られます

  • 水深34.5メートル
  • 底質はSAND(砂)
  • 海底はフラット(平坦)
  • 宙層に魚群反応がある

この画像の宙層~上層に映っている魚群の正体はカタクチイワシです。
カタクチイワシの反応を解説する前に魚探画面の表示についておさらいしておきましょう。

魚探の画面にはボート直下の最新情報が次から次へと画面右端部分の縦1列に表示され、表示は順次左方向へ移動していきます。つまり、右端部分の縦1列よりも左に表示されたものはすべて過去の情報となる訳です。
最新情報が右端に縦1列で表示されてもそれは「面」ではなく「線」なので、それだけで海中の様子を捉えるのは困難です。左へ移動しつつ画面内に残っている縦の列が複数並ぶことにより「線」ではなく「面」として、海中の様子を視覚的に捉えることができるようになる訳です。

実際の魚探画像に話を戻しましょう。この画像には2つの大きな魚群反応が表示されています。まず先に画面左側の魚群がボート下を通過し、次に右側の魚群が通過している状況です。この右側の魚群は表示された反応の一部が画面の右端部分に掛かっているので、まだ魚群はボート下に存在することを意味しています。

次に「Aスコープ」部分に注目してください。Aスコープはエコー(反射波)の強さを水平方向へ表示する機能であり、最新情報を視覚的に捉えることが可能になります。前述したように通常の魚探では左へ移動しつつ画面内に残っている縦の列が複数並ぶことで海中の様子を視覚的に捉えることが可能になるので、例えば、魚群の存在に気付いた時には既に魚群が通過した後だった…ということも多々あります。一方、Aスコープなら最新情報だけでも視覚的に捉えることができるので、リアルタイムでボート下の状況を知る上で有効な手掛かりとなります。

実際にこの画面の撮影直後にサビキ仕掛けを降ろすと13センチほどのカタクチイワシが鈴なりに釣れました。
なお、画面内にはアキュフィッシュ機能により単体魚の体長が数値で表現されています。釣り上げた13センチに対し、もう少し大きな数値が表示されていますが、これは魚群の密度が高い時にありがちな傾向で、この様な時には最も小さな数値が実際のサイズに近くなります。

カタクチイワシは青物、マダイ、ヒラメ、根魚など多くの魚が好んで捕食する魚であり、カタクチイワシの行動を知ることで大物狙いの手掛かりになることが多々あります。そのためにも魚探画面の表示情報を正しく理解しておきましょう。

  • カタクチイワシを追う vol.1 釣果写真 食べても美味しいカタクチイワシは万能な生きエサとして活用できます
  • カタクチイワシを追う vol.1 水中画像 ボート直下の最新情報を得るにはAスコープ機能が便利です

カタクチイワシは泳ぎながら口を大きく開けることで海水を取り込み、エラでろ過することで海水とともに取り込んだ動物性プランクトンや植物性プランクトンを摂食します。この映像ではわかりにくいのですが、この時も摂食の真っ最中でした。
サビキ仕掛けでも手軽に狙うことのできるカタクチイワシは体長15センチほどの小さな魚ですが、食味が良く、古くから日本人には目刺し、煮干し、アンチョビなどとして馴染み深い魚となっています。人間の食用はもちろんのこと、釣りにおいてもとても有効なエサとなります。具体的なターゲットとしては小さなものではメバル、カサゴ、ソイなど、大きなものではヒラメ、マゴチ、マダイ、青物など・・・多くの魚がカタクチイワシを好んで捕食します。自然界において青物類に追われている時はこの映像のように口を開けながらゆっくり泳ぐのではなく、抵抗にならないよう口を閉じ、猛スピードで逃げることになります。

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。