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魚種ごとの反応

カタクチイワシを追う vol.2

魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?

カタクチイワシを追う vol.2 GPS魚探映像 魚群反応のタナ、形、密度の均一性からカタクチイワシが現在おかれている状況が推測できます

ボートは船速を2ノット程度(人が歩くほどの速さ) にまで落とし、魚探画面を見ながら仕掛けを下ろすポイントを探している最中に撮影(画面キャプチャー)したものです。魚探から発信する超音波の周波数は画面左側が周波数の50キロヘルツ、右が200キロヘルツで海中を探知した反応画像となっています。

この画像からは以下のような情報が得られます

  • 水深19.5メートル
  • 底質は一部分だけSAND(砂)となっていて、他の部分は不明
  • 宙層に魚群反応がある

この画像の宙層に映っている魚群の正体はカタクチイワシです。
カタクチイワシは日本で最も漁獲量の多い魚で、主に煮干しなどの干物として食用に獲られています。

カタクチイワシにとっての敵は人間のみならず、カモメなどの海鳥、そして、青物、マダイ、ヒラメ、根魚など天敵は多岐にわたっています。
それら天敵から身を守るために群れは密集隊形を作り、その1尾1尾全てが同調して同じ向きに泳いで敵の攻撃をかわす防衛策にて行動しています。

カタクチイワシを探すことは決して難しいことではありません。但し、天敵が多い魚なので、1箇所に留まらず、広範囲を逃げ回っていることが多いので闇雲に走り回っても群れを見つけるのが困難な場合もあります。
そこで頼りになるのが、カモメ等の海鳥の行動で、カタクチイワシの所在を明確に伝えてくれます。とくに海面にできたトリヤマの下には間違いなくイワシ類が居ると言っても過言ではありません。

トリヤマに向かってボートを進める際には細心の注意が必要です。
臆病者のカタクチイワシはボートが波を叩く音やエンジン音に驚き、群れがどんどん深く潜行してしまったり、ボートからどんどん離れて行ってしまうことにもなるためです。

魚群に近づくことができたら、カタクチイワシが現在おかれている状況を魚探から得られる情報にて推測します。
この魚探画面のように宙層に映った魚群反応が濃淡のない均一なものであれば、あまり天敵に狙われることなく、悠々と泳いでいる状況と考えることができます。
逆に下の魚探画像のように反応の濃淡が均一でない場合は、魚群が何かしらのストレスを感じている状況と判断できます。この画像では魚群のタナが宙層よりも表層側に位置し、その密度も表層側が高くなっています。このような魚群反応が表示された場合には、下方から天敵が迫っている可能性が高くなります。つまり、それら天敵を狙った釣りを行なうとチャンスがあるかもしれません。
また、「カンパチを追う」で紹介した魚群画像のように魚群反応が不連続な形の時にも天敵が存在する可能性が高くなります。

魚探に映るカタクチイワシの反応形態によって天敵となる魚の存在を推測できることになるので、それら天敵を制するには、まずカタクチイワシの行動を把握することが近道だと考えます。

  • カタクチイワシを追う vol.2 釣果写真 釣って楽しいカタクチイワシですが、その一方で大型魚の存在を知るバロメーターにもなります
  • カタクチイワシを追う vol.2 水中画像 表層側への密集度が高くなった状況の魚群反応。下から天敵に狙われている可能性大です

カタクチイワシは泳ぎながら口を大きく開けることで海水を取り込み、エラでろ過することで海水とともに取り込んだ動物性プランクトンや植物性プランクトンを摂食します。この映像ではわかりにくいのですが、この時も摂食の真っ最中でした。
サビキ仕掛けでも手軽に狙うことのできるカタクチイワシは体長15センチほどの小さな魚ですが、食味が良く、古くから日本人には目刺し、煮干し、アンチョビなどとして馴染み深い魚となっています。人間の食用はもちろんのこと、釣りにおいてもとても有効なエサとなります。具体的なターゲットとしては小さなものではメバル、カサゴ、ソイなど、大きなものではヒラメ、マゴチ、マダイ、青物など・・・多くの魚がカタクチイワシを好んで捕食します。自然界において青物類に追われている時はこの映像のように口を開けながらゆっくり泳ぐのではなく、抵抗にならないよう口を閉じ、猛スピードで逃げることになります。

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。