HOME 魚種ごとの反応 アカムツを追う vol.2

魚種ごとの反応

アカムツを追う vol.2

この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?

アカムツを追う vol.2:魚探映像例 水深が深い場所を探知するには低周波が有利となる。海底付近の淡い魚群反応を捉えるために手動でゲイン調整を行うことをオススメする

ボートはスパンカーを使ったエンジン流しにより船速0.2ノット程度で流しました。
魚探から発信する超音波の周波数は画面左側が50キロヘルツ、右側が200キロヘルツで海中を探知した反応画像となっています。

この画像からは以下のような情報が得られます

  • 水深201メートル
  • 海底は高低差の大きな起伏がある
  • 海底から約20メートルの範囲に魚群反応がある

この魚探画面はアカムツ狙いの合間にキャプチャー(撮影)したものです。
以前にも解説しましたが、超音波の周波数50キロヘルツと200キロヘルツでは水中での性質(分解能、到達距離、指向角)に差が生じます。

アカムツを追う vol.2 超音波の周波数によって水中での分解能、到達距離、指向角が異なるのでその特性をしっかり把握しておきたい

繰り返しになりますが、おさらいしておきましょう。
分解能 : 低い周波数ほど分解する能力が低く、高い周波数ほど分解する能力が高くなります。
到達距離 : 低い周波数ほど減衰しにくく到達距離が長くなり、高い周波数ほど減衰しやすく到達距離が短くなります。
指向角 : 探知可能な範囲の目安となる指向角(実際には発信強度が半分になる角度)は低い周波数ほど広くなり、高い周波数ほど狭くなります。
以上をまとめると右表のようになります。

アカムツをはじめとした中深海の魚を狙う場合には、水深が深い海底付近に棲息しているということもあり感覚的には分解能の面で有利となる高い周波数を使いたくなってしまうのですが、実際には高い周波数では到達距離の点で不利となり、水深によっては海底を捉えることさえおぼつかなくなります。
この画面画像では右側が「HF (High frequency) 」つまり高い周波数となる200キロヘルツで、(手動でゲインを+100と設定しているにもかかわらず)海底ラインが淡くしか映されていません。

一方左側の「LF (Low frequency) 」つまり低い周波数となる50キロヘルツでは海底ラインが明確に映し出しています。さらに海底から約20メートルの範囲に存在する魚群の反応も明確に捉えています。
この魚群反応が表示されているときに仕掛けを降下させると、アカムツやクロムツ、そしてシロムツ(標準和名ワキヤハタ)を釣り上げることができたのでその魚群反応の正体はこれらの魚である可能性が高いと考えられます。

厳密な話をすると、低い周波数では前述したように指向角が広い分、ボート直下の情報だけでなく、広い範囲の情報(例.魚群)まで捉えることができてしまうために指向角で作られる円錐底面の端の方に存在する魚群が映し出されている可能性もあります。また、水深が深い分、仕掛けを真下に下ろしたつもりでも、降下の途中でボートの位置が動いてしまったり、潮流の影響で仕掛けが真っすぐ降りて行かないケースがほとんどです。

つまり、ボートの位置に対して魚群の存在する方向が分からないばかりか、仕掛けが降りていく方向さえも把握できない状況となります。
それでも、魚がヒットするのは魚群自体も(上から見ると)面積を持っていることや、エサが少ない深海の海では魚たちもエサを探し回っていることなど様々な要因が考えられますが、ポイント探しや実釣中のボートコントロールが釣果を大きく左右することはいうまでもありません。
深海という難しい条件の中でも根気よく、探求心を持って挑み続けているアングラーのみが出あえるターゲットのひとつアカムツ。
水面下にメタリックレッドの魚体が見えた瞬間、大きな達成感が得られる魚なのでチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

  • アカムツを追う vol.2:釣果写真 アカムツとクロムツの釣果。上手く魚群のもとへ仕掛けを降ろすことができれば、多点掛けも夢ではないターゲットだ
  • アカムツを追う vol.2 釣果写真 左からシロムツ(標準和名オオメハタ)、クロムツ、アカムツで、同じポイントで釣れることがあります

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。