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魚種ごとの反応

カンパチを追う vol.7

今回はFCV-800にCW(連続波)タイプの送受波器(525-5PWD)とチャープタイプの送受波器(B150M)を同時に接続して得た探知画像を元に解説していきます。
この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?

カンパチを追う vol.7 GPS魚探映像 高低差2メートルほどの起伏が在っても船速が遅いと緩やかな斜面に表示され、凸凹に気づきにくくなります

この魚探画像は、船首に装備したエレキモーター(IPILOT)によってボートを0.3ノット程度の船速で走らせながら撮影(画面キャプチャー)したものです。

この画像からは以下のような情報が得られます

  • 水深33メートル
  • 海底底質はRCKS(岩)
  • 海底から約5メートルの範囲に魚群反応が存在する

画面に表示された海底ラインは一見、水平でフラット(平坦)に見えますが、実際には高低差2メートルほどの根(岩礁)の上を通過するようにボートで流しています。前述したように船速が0.3ノット程度と遅かったために画面に表示される海底ラインがごく緩やかな斜面に表示され一見、フラットに見えてしまっています。
高低差2メートルほどの根ではありますが、その部分の上側にはベイトフィッシュらしき魚群反応が映っています。

右側画面が海面から海底までの範囲をすべて表示していることから深度方向が圧縮されており、海底付近の様子を把握しづらくなっています。
一方、左側画面は” 海底直線拡大 ” (BL)という設定で表示したもので海底から上側への5メートルの範囲を切り出し、画面の縦方向いっぱいに拡大表示しているので海底付近の詳細を把握する上で有利となります。

右側画面でもベイトフィッシュらしき魚群反応を確認できますが、左側画面の方ではさらに大型の単体魚と思われる軌跡(連なった反応)が表示されていることを確認できます。
スキューバダイビングで観察してみるとカンパチは60センチ程度のものまでは群れで行動していることが多く、それ以上のサイズになると単独行動している姿を見掛けます。

この左画面に映された大型の単体魚と思われる軌跡をカンパチの反応と断定することはできませんが、ベイトフィッシュらしき群れを狙っている何かしらの大型魚であることはほぼ間違いありません。
なお、赤字で表示されているのはアキュフィッシュ機能による単体魚の体長表示の数値ですが、今回の画面上に表示されている大きな数値の「111」や「153」はやや疑わしく、複数の魚が密集して存在したために大きな1尾として誤って体長表示したと判断するのが妥当でしょう。

  • カンパチを追う vol.7 釣果写真 ラバージグにヒットした体長50センチ弱のカンパチ。なかなかの引きでした
  • カンパチを追う vol.7 水中画像 ダイビングで観察した経験では体長60センチ程度までのカンパチは群れで行動している印象です。(この画像の2尾はヒレナガカンパチです)

水深23メートルのダイビングポイントにおいて中層に現れた20尾ほどのカンパチの映像です。いずれもサイズは70センチ前後の3キロ級で、ゆっくり悠然と泳いでいました。
映像には映っていませんがこの場所の海底にはブロック漁礁が設置されており、その周りには小型のイサキが数多く群れていました。カンパチはそのイサキを捕食するために集まって来ているようでしたが、イサキの群れのすぐ上に私がカメラを構えて陣取っていたためにカンパチは捕食行動に移行できず困っているようでした。私が居なければ、カンパチ達はタイミングを見はからってイサキに襲い掛かるのだと思います。
魚群探知機で下層にベイトフィッシュの魚群が映り、中層に大型の単体魚が複数映し出されるような時は水中でこのような状況となっているのかもしれません。魚探画面に映し出された情報から水中の様子をイメージすることはボートフィッシングにおいてとても大切なアクションです。

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。