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魚種ごとの反応

カタクチイワシを追う vol.4

今回はFCV-800にCW(連続波)タイプの送受波器(525-5PWD)とチャープタイプの送受波器(B150M)を同時に接続して得た探知画像を元に解説していきます。
この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?

カタクチイワシを追う vol.4 GPS魚探映像 魚群の形状や密集度合い、亀裂の有無などをチェックすることで魚群がおかれている状況を推察できます

この魚探画像は、船首に装備したエレキモーター(IPILOT)によってボートを0.3ノット程度の船速で走らせながら撮影(画面キャプチャー)したものです。

この画像からは以下のような情報が得られます

  • 水深51.8メートル
  • 海底底質はSAND(砂)で一部にRCKS(岩)がある
  • 宙層に魚群の反応が映っている

この日は宙層に同様の魚群反応が繰り返し現れました。
通常の魚探画面ではボート直下の最新情報が画面の右端縦1列に逐次表示されますが、Aスコープはその縦1列をエコー(反射波)の強さに応じて水平方向へ広げて表示します。それにより最新情報を視覚的に捉えやすくなり、少ないタイムラグでの仕掛け降下が可能になります。特に今回の様に魚群が回遊してすぐにボート直下から移動してしまうような状況の時にはAスコープは有効な表示機能となり、この日もAスコープに魚群が現れ始めたタイミングでサビキ仕掛けを降下させることで体長12センチほどのカタクチイワシを鈴なりに釣り上げることができました。

イワシ(鰯)を漢字で表記すると魚へんに弱となりますが、これは陸に揚げるとすぐに弱って傷んでしまうことに起因らしいのですが、水中においてもイワシは弱く、多くのフィッシュイーターから狙われる立場にあります。カタクチイワシを好んで捕食するフィッシュイーターには青物、マダイ、ヒラメなどあり、それらを狙うときのアプローチ方法としてはカタクチイワシの反応を探すということが一般的に行われています。

この魚探画面に映っているカタクチイワシの魚群反応は形状が概ね楕円であり、内部の密集度合いもほほ均一、そして魚群内に亀裂等が見当たらないことからカタクチイワシは大したストレスもなく泳いでいると推察できます。逆に魚群反応の形状がイビツで、内部の密集度合いがバラツキ、そして魚群内に亀裂等が在る場合にはカタクチイワシがフィッシュイーター等に追われて逃げ回っている可能性が高くなります。
この画面画像に映っているカタクチイワシの魚群反応の下側にはアキュフィッシュ機能による単体魚の体長表示として「75」と「53」の数値が在り、このサイズに近いフィッシュイーターがカタクチイワシに襲い掛かるタイミングを見はからっているのかもしれません。またその他にも水深40メートル以深には別の魚群反応が在り、複数の単体魚が映っています。

実際にこの日は宙層の魚群のタナにてカタクチイワシを数尾掛かけ、そのまま低いタナ(海面から40メートルの付近)まで仕掛けを落とし込みました。するとすぐに強烈なアタリが届いたのですが、強烈な引きに何の対処もできないまま仕掛けを切られてしまいました。サビキ仕掛けに掛っていたカタクチイワシを何かしらのフィッシュイーターが喰った模様です。この時、ハリスが太めの落とし込み用仕掛けを持ち合わせていなかったことを悔やむとともに、その魚の正体を確認できずに終わったことが残念でなりませんでした。
カタクチイワシの魚群の近くには大物あり・・・そう思った方がいいのかもしれませんね。

  • カタクチイワシを追う vol.4 釣果写真 仕掛けを魚群のタナに合わせられると鈴なりに釣り上げることができる
  • カタクチイワシを追う vol.4 釣果写真 刺し身でも、干物でも、フライでも美味しいカタクチイワシ

カタクチイワシは泳ぎながら口を大きく開けることで海水を取り込み、エラでろ過することで海水とともに取り込んだ動物性プランクトンや植物性プランクトンを摂食します。この映像ではわかりにくいのですが、この時も摂食の真っ最中でした。
サビキ仕掛けでも手軽に狙うことのできるカタクチイワシは体長15センチほどの小さな魚ですが、食味が良く、古くから日本人には目刺し、煮干し、アンチョビなどとして馴染み深い魚となっています。人間の食用はもちろんのこと、釣りにおいてもとても有効なエサとなります。具体的なターゲットとしては小さなものではメバル、カサゴ、ソイなど、大きなものではヒラメ、マゴチ、マダイ、青物など・・・多くの魚がカタクチイワシを好んで捕食します。自然界において青物類に追われている時はこの映像のように口を開けながらゆっくり泳ぐのではなく、抵抗にならないよう口を閉じ、猛スピードで逃げることになります。

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。