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[新型]小型ボート用GPSプロッタ魚探

新型GPS魚探2種の説明

2012年春、横浜の国際ボートショー会場において発表されたフルノ・小型GPSプロッタ魚探2機種が発表された。この新製品は、操作性や視認性、装備性が格段に優れているところから、中小型フィッシング・ボートには最適なマリンギアとして人気を博しそうな予感がする。

フルノから発売されるGPSプロッタ魚探。本体にGPSアンテナを内蔵した最新鋭機だ

ニューペック電子参考図採用

新型2種は瀬戸内海での釣行には最適なGPSプロッタ魚探だ。

奥行約10センチのコンパクト・ボディで、取り付け金具を含んでも1.5キロと軽量だ。

大きな特徴は、使用する海岸線データが素晴らしい情報量を持っていることだ。新型GPSに使用するのは「ニューペック(new pec)」と呼ばれる電子参考図である。

この海岸線データは、今回、フルノが開発したGPSプロッタ魚探に初めて使用できるチャートソフトである。従来、ニューペック(new pec)電子参考図はパソコン画面で表示しなければならなかったが、新型の登場によりGPSプロッタ魚探画面上で詳細な海岸線情報を表示できるようになった。

ニューペック(new pec)は、国土交通省海事局が指定する沿岸小型船舶用電子参考図のこと。安全航行に不可欠な海上情報と海中情報に加えて、たいへん詳細な等深線データ表示を実現している。

ニューペックの活用により、ボートの安全航行に役立つことはもちろん、釣り海域への航行に加えてシビアなアジロ決定に役立つなど、一段と釣果に影響を与えるマシンとなるだろう。特に、瀬戸内海での釣りには必携のマシンとして期待されている。

新型GPSにはユニークな機能が搭載されている。単体魚の魚サイズを表示するアキュフィッシュ機能である。最近、アキフィッシュ情報はボート仲間での釣行情報交換に活用されるようになってきた。画面上に計測表示される魚体長(センチメートル単位の数値で表示)数値の精度も向上しており、アングラー仲間では信頼できる情報源として使われている。

最新の沿岸小型船舶用電子参考図「ニューペック(new pec)」表示例

また、最近開発された海底質を4段階に区分け表示する底質判別機能も搭載されている。小型マシンながら機能満載の新製品である。
ここで機器の内容について少し見てみることにしよう。

直射日光下でも鮮明表示

フルノ新型GPSプロッタ魚探には、2機種の製品が準備されている。5.7型液晶表示器搭載(GP-1670型)と、横長の7型ワイド液晶表示器搭載(GP-1870型)マシンである。
どちらも高輝度で表示解像度の高いカラー液晶表示器が採用されている。しかも、表示器の明るさは直射日光下でも見やすい900カンデラ(5.7型は800カンデラ)である。このため昼夜を問わず、また装備環境にも左右されず、鮮明な画像表示が得られるとしている。

  • 5.7型液晶表示器を備えたGP-1670F型
  • 7型ワイド液晶表示器を備えたGP-1870F型。
    液晶画面が横長になっており、より多くの情報が表示できる。

先日、フルノ本社で新型マシンを見せてもらった。まだ試作段階のものだったが、クリアな画像表示と優れた操作性にはすごく感激した。さて、ここでフルノ担当者に聞いたマシンの電気的特徴を紹介しよう。

本体にGPSアンテナ内臓

指示部本体にはGPSアンテナが内蔵されているのでアンテナ設置は不要である。ただし、受信環境がよくない場合は、別売の外部アンテナを利用するといい。

  1. すっきりしたマシンボディにGPSアンテナを内蔵している。

    中小型ボートであれば、指示部本体内蔵アンテナでGPS信号を受信できるので測位には支障がないとのことだ。もちろん、どうしても外部アンテナが必要な場合は別途準備されている外付けアンテナを配線装備できる。

  2. アキュフィッシュ機能を搭載している。

    これはフルノが独自に開発したユニークな計測機能で、単体魚のサイズをセンチメートル単位まで測り、画面上に数値や魚マークで表示するというものである。数年前、アキュフィッシュ機能搭載魚探が開発されたが、今日ではフルノの他機種にまでこの機能が搭載されるようになっている。開発当初、この機能は遊び心で採用されたが、実際の釣行結果が素晴らしく、今では多くのアングラーに愛用されている。そんな素晴らしい機能がこのGPSプロッタ魚探にも組み込まれている。

海底質をビジュアル表示

アキフィッシュ機能が搭載されている。魚体長をセンチメートル単位で表示する。

海底質判別機能も搭載されている。海底質を4段階に分類し、明確なビジュアルで表現する。

操作部。少ないキー配置により、スピーディな操作が実現する。

旧型GPS魚探装備艇では、指示部本体を換装するだけでOKだ。

  1. 海底質判別機能を搭載している。

    これは最近開発された新機能である。この機能を作動させると海底の底質状況を判断してビジュアルで海底質を表示する。水深が5~100メートルの釣り場であれば、海底を岩・小石・砂・泥の4種類の底質タイプに分類し、画面下部に見やすいグラフィックで表示する。ただし、送受波器は船底を貫通させるスルーハル方式またはトランサム方式の装備が必要となる。

  2. 直観的で扱いやすい操作を実現している。

    新型の操作パネル部にはロトキー(RotoKey)と呼ばれる回転キーが配置されている。ツマミを回すだけで海図画面の拡大縮小ができるほか、ツマミを押すことで頻繁に使用するメニュー画面表示ができるなど、理解しやすい操作性を実現している。

  3. 直射日光下においても画面が見やすい高輝度液晶表示器を採用。

    画面は900カンデラ(5.7型は800カンデラ)と見やすくて明るい。光の反射を抑え、よりいっそう視認性を高めるARコーティング処理が施されている。

  4. 偏光サングラス使用でも画面はクリアに表示する。

    液晶表示画面に特殊処理が施されているため、どの角度からでもクリアな映像を見ることができる。偏光サングラス使用時も新型の画面はクリアに視認できる。

  5. 海岸線データ画面は2分割表示できる。

    電子チャートのデュアルレンジを使用すると左右に2画面表示ができ、異なる縮尺の海岸線データを併記できる。一方に広域チャートを、他方に自船の現在位置周辺チャートを表示するというような使い方が可能となる。

  6. 海岸線データ上の自航跡と目的地表示ポイントは、それぞれ3万点もある。

    余裕のある自航跡表示が可能となる。航行ルートは1000本のルートの設定ができる。なお、ルート内の目的地数は50点である。

  7. 表示器の結露が生じない構造を開発している。

    特殊なボンディング処理により表示器とガラスとが完全に接着した構造になっているため結露が生じない、としている。

  8. 従来機との換装が可能。フルノのGP-1650/1850/7000Fの使用艇であれば、容易に換装できる。

    換装キットの使用で新型と旧機の入れ替えが簡単にできる。送受波器、電源ケーブルのほか、GPSアンテナケーブル(外付けオプション使用時)も共通使用が可能である。ただし、魚体長計測のアキュフィッシュ機能や、底質判別機能を使いたいときは、フルノから製品型式が指定されているのでこれを参考にする。どのような送受波器を使用するかは、販売店、メーカーに確認する必要がある。

海岸線データはSDカードに記憶

新型に使用する電子チャートは、日本水路協会から発行販売されている「ニューペック(new pec)」である。この電子参考図は、もともと水路協会からCD媒体で発売されているものだが、このほどフルノから発売された小型GPSプロッタ魚探に使えるものとして商品化されている。

新型にはこの「ニューペック(new pec)」を使用しており、安全航行のための詳細海岸線情報を表示できるようになった。電子参考図データは、SDカードに記憶されている。このカードを本体のパネル前面下部にある受け口に差し込むことにより、詳細な海岸線データが表示できる。新型の標準支給品の一部にこのニューペック(new pec)SDカードが1枚付属している。聞くところによると、ニューペック(new pec)電子参考図は1枚が8万円ほどするらしいが、新型にはこの高価な海岸線データが付いているとのことだ。

  • 右下部のゴムカバーをはずすとカード用スロットがある
  • 背面部。電源、送受波器、GPS外部アンテナなどのコネクタが配置されている

少ないキー配置で迅速な操作実現

ここで簡単に新型の指示部パネルを見てみよう。 7型ワイド液晶のGP-1870F型の操作部を見ると、指示部本体の右側に各種操作キーが配置されていて、少ないキー配置で、迅速な操作の実現を可能にしている。まず、操作部上段左側には「画面・選択」キーがある。短押しするといろいろな表示画面の種類を選択するための表示窓が現れる。長押しすると、異なった機能となり、画面併記モードの画面選択に使う。

右側には「戻る」と「メニュー」を兼ねたキーがある。戻るキーは現在の操作を取り消すときに使うものであり、長押しすることでメニュー画面が開くようになっている。 その下には上下左右方向を示すカーソルパッドが配置されている。押した矢印の方向にカーソルまたは画面を移動させるときに使う。 真ん中にある丸形キーは、入力キーである。現在の操作を確定するときに押す。下段左には、「目的地・行き先」キーが、右には「位置情報・MOB」キーが配置されている。
その下にある大きな回転ノブはロトキー(RotoKey)である。回転させたり、押したりの使い分けができる。メニュー画面の選択など効率のよい操作ができる。そして、右下の青色キーは、電源と画面輝度調整キーである。最下部に小さなラバーキャップがあるが、この内部にはSDカードの差し込み口が設けられている。海岸線表示のためにニューペック(new pec)データが記憶されたSDカードを差し込む。このほかリセットボタンなども配置されている。

ニューペック(new pec)SDカードの差し込みのほか、自航跡やルートなどの自船データを市販のSDカード*を使って保存することもできる。また、画面をキャプチャーできるスクリーンショット機能があり、そのデータをSDカード*に保存して取り出すことも可能である。新型はSDHCという規格に対応しており、最大32 GBのカードが使える。

*一部使用できなSDカードがございます。

  • このクラスのボートには最適なマシンとなる。
  • 20フィートクラスのフィッシングボートにも装備がしやすいマシンである。

最近、ユーチューブで本機の概要説明がアップされている。
また、近々に本機の操作方法や使い方の動画もアップするとのこと。興味のあるアングラーには参考になるだろう。

(ボートフィッシング誌2012年7月号掲載)

著者紹介

マリンギアライター 須磨 はじめ さん

神戸市須磨区在住

「ボートフィッシング」では、「すぐに役立つ電子機器解説」の連載を持つ。
著書:「電波航法機器」「電波機器と超音波機器」「魚探・GPS100%使いこなしブック」他