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小型GPS「GP-33」の設置例

小さなGPS登場!

2010年、フルノから新発売された小型GPS航法装置「GP-33」が人気を集めている。このマシン、筐体が小さく軽量で、簡単操作、しかも安価という三拍子そろったGPS航法装置である。

本機は小型軽量でありながら、明るく極めの細かい表示が可能な4.3型カラー液晶画面を備えている。ここに自航跡表示画面、ハイウェイ画面、対地進路画面など、安全航行のための各種の航海情報を表示する。 筆者も各地のボートショー会場で本機に触れてみたが、繊細で優美な画面表示には毎回見惚れてしまう。

メーカー談では、このGPSは小型ボートには最適な航海機器であり、また大中型ボートのGPS予備センサーにも使えるとしている。本機のような小型GPSはあまり市販されておらず、GPSを未装備の小さなボートには受け入れやすい機器となるだろう。 本機の販売価格は、税込みで73,290円である。

  • フルノの小型GPS「GP-33」
  • 寺岡さんの「てらっち」号

20フィート艇に搭載!

フルノの小型GPS「GP-33」

寺岡さんの「てらっち」号

アンテナはしっかり固定する

先日、GP-33の設置状況を見学取材できたので紹介しよう。 ボートの係留地は兵庫県明石市にある二見ボートパークである。このパークは兵庫県が建設、NPO法人UWHが経営管理している。マリーナのようなセンターハウスや付帯設備はなく、岸壁からポンツーンが突き出した簡単な施設である。

今回取材するのは20フィートの「てらっち」号である。本艇はヤマハ製であり、船外機は50馬力が搭載されている。 本艇のオーナーは電気メーカーに勤務する寺岡良一さん(54)。寺岡さんは「このGPSは自分で取り付けます。航海電子機器の設置や扱いは案外簡単ですから・・・」と手馴れた様子だ。

艇上に並べたGP-33の製品一式を見ると、なるほどすごくシンプルである。指示部本体とアンテナの2つのユニットに、末端にコネクタの付いたアンテナケーブル、電源ケーブルが付属しているだけである。

寺岡さん、まずはGPSアンテナの取り付けから始めた。アンテナ部分はこぶしほどの小さなものであり、簡単に設置できそうだ。 本艇のルーフは日除け目的で設置した簡単なものだが、これは寺岡さんの自作によるものとのこと。ホームセンターで購入した材料のみでルーフを製作し、艇に取り付けている。

GPSアンテナは、このルーフ支柱の左舷側前部に取り付けることにした。支柱にアンテナを固定する取付金具には、市販の短い塩化ビニールパイプを使っている。 GPSアンテナの下部からは、長いアンテナケーブルが伸びている。ケーブルの長さは10メートルもあるのでルーフ支柱に沿わしながら、操舵コンソールの背面へ這わしてGPS指示部本体の設置場所まで配線する。 途中、アンテナケーブルは結束バンドでルーフ支柱にしっかりと固定する。ケーブルがふらついていると船体震動や風などにより断線の原因になる。

指示部本体への電気供給は船内のバッテリを使う。電源ケーブルの先端は、配電盤のプラス端子に赤色を、マイナス端子に黒色をつなぐ。

最後に指示部本体を操舵コンソールの上部に取り付ける。まず、指示部本体と取付ハンガーを分離し、先にハンガー部分をコンソール台に固定する。4箇所をネジ止めにするだけである。

そして、指示部本体背面にある各コネクタに配線した2つのケーブルコネクタを差し込む。 コネクタは、指示部本体背面に向かって、右側にGPSアンテナ用が、左側に電源用が配置されている。コネクタは形状が異なるので挿し間違えることはないから安心である。

コネクタを挿し込んだあとは、カバー部分を右へ回して固定しておく。船体震動によってコネクタがゆるみ、機器トラブルの原因になることがあるのでコネクタカバーはしっかりと止めておく。 (中央にある丸形のものはパソコンや航法機器を接続するためのコネクタである。今回は使用しないのでゴム蓋でカバーされている)

ここまでで電気的処理は完了した。指示部本体を取付ハンガーにはめ込み、両端のノブを回してしっかりと固定しよう。これでGP-33の装備は終了である。 なお、指示部本体の設置方法には、本艇のような卓上装備のほかに天井部分からの吊り下げ方式、操舵コンソールパネルへの埋め込み装備などが可能である。

アンテナ設置時の注意点!

操舵コンソール上部にネジ止め

指示部本体背面

GPSアンテナは、小さくて軽いためどこにでも設置できるが、取り付け場所によっては電波障害を受けることがあるので注意が必要だ。概略次のようなことに気をつけよう。

  1. レーダーアンテナのビームから外れたところに取り付けること。本艇の場合、レーダーがないので問題はないが、レーダー搭載艇では、レーダー電波の影響を受けないようにGPSアンテナの高さを変えるなど考慮しよう。
  2. VHFやUHF無線アンテナから離すこと。無線アンテナが隣接している場合、GPS航法装置は無線機が作動したときに発射電波により妨害を受けることがある。
  3. 周辺に電波障害物がないところに設置すること。GPS衛星とGPSアンテナとの間に障害物があると受信電波がさえぎられ、位置測定に時間がかかることがある。本艇のような小型艇では、ルーフ上には大きな障害物がないので問題はない。
  4. GPSアンテナは高くすること。アンテナは障害物のない場所に設置するが、海水などしぶきが当たらない場所を選ぶ。冬場など、アンテナの飛沫が凍るとGPS衛星信号が受信しにくくなる場合がある。
  5. アンテナケーブルは切断しないこと。ケーブルは標準で10メートル長が付属しているが、長いからといってカットしないこと。勝手にカットすると、接触不良などトラブルの原因になる。余ったケーブルは途中を束ねてそのまま保存しよう。

指示部の電源は!

GP-33装備完成(上段)

本機に供給する船内電源バッテリは、DC12ボルトでも24ボルトでも使える。もちろんDC12~24ボルトの範囲の電圧ならOKである。小型ボートでは一般にDC12ボルトバッテリを1個搭載しているのでそのまま使える。

「てらっち」号では、12ボルト、105アンペアのバッテリが1個搭載されている。電気は電源スイッチ付きの配電盤経由で指示部本体へ供給している。

本機の消費電力は、2.88ワットであり極めて少ない。このため特別にGPS専用バッテリを搭載する必要はなく、現用のバッテリから電気をとることができる。

本機の仕様によると消費電力は、GPS指示部本体へ供給する電圧が12ボルトの場合は0.24アンペア、24ボルトの場合は0.12アンペアとなっている。

さっそく走行!

GP-33のテスト走行する寺岡さん

本日の釣果

GP-33の装備はあっと言う間に終了したのでテスト走行を兼ねて艇を走らせてもらった。

出港時、GP-33の電源を入れたあと、まず釣りポイントを設定した。岸壁をかわしたあたりで液晶表示をハイウェイ画面(舵取りに便利)にすると、設定ポイントまでの距離や方位、設定コースからのずれ量などが表示された。

寺岡さんは、時々プロッタ画面に切り替えて自航跡を確認しながらの走行である。残念ながらプロッタ画面では海岸線や島などの情報は表示できないが、縦横の緯度経度線を細線で表示するため、海図上に自航跡がプロットされたリアルな画面表示になっていた。

本機のプロッタ画面縮尺は、0.02マイルから320マイルまで、14段階の切り替え表示ができる。

寺岡さんは「特に最小レンジの0.02マイル(=37メートル)表示はピンポイント探しに使えるねえ!」と、メバル狙いなどこれからの釣行に期待している様子だった。

さて、本艇が到着した海域は、二見港から西へ小一時間ほど走ったところにある上島だった。ちょうど姫路東部の真南あたりの海域である。

小さな島の周辺はキスの好ポイントとのことでさっそく釣りを開始。水深は20メートルである。真昼の炎天下のため水温が高く、また少し潮の流れがあり釣り辛い場面もあったが、短時間の釣行にしてはまずまずの釣果となった。

(取材協力:「てらっち」号、古野電気)ボートフィッシング誌2010年11月号掲載

著者紹介

マリンギアライター 須磨 はじめ さん

神戸市須磨区在住

「ボートフィッシング」では、「すぐに役立つ電子機器解説」の連載を持つ。
著書:「電波航法機器」「電波機器と超音波機器」「魚探・GPS100%使いこなしブック」他