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魚種ごとの反応

マアジを追う vol.5

この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?

マアジを追う vol.5 魚探映像 海底ラインの細かなギザギザと、細かく途切れた魚群反応が当日のボートの揺れ具合を表現している

当日、ボートはスパンカーを使ったエンジン流しにて船速0.3ノット程度で流しました。
画面左側が周波数50キロヘルツ、右側が200キロヘルツで海中を探知した画面キャプチャー画像となっています。

この画像からは以下のような情報が得られます

  • 水深40.8メートル
  • 海底底質は「RCKS」(岩)
  • 宙層から下層にかけて魚群反応が在る

上記3点以外にも海底ラインが細かいギザギザになっていることや、魚群反応が細かく途切れていることに気付きましたか?

当日の海面はやや波立っていて、ボートが短い周期で揺れていました。揺れ方はローリングとピッチングが合わさるような複雑な揺れでした。
魚群探知機に繋がれた送受波器(振動子)から発信する超音波は本来、海中の真下方向へ向かわなければならないものですが、ボートの揺れによって方向が定まらず、海中の斜め方向へ発信されてしまう状況でした。このことで水深の算出結果が深くなったり、浅くなったりして表示画面上の海底部分が細かいギザギザで表現されました。また、魚群反応も本来は連続的に捉えられるべきものですが、途中で捉えられなくなるタイミングが発生し、その結果、細かく途切れたように表現されました。

ボートの揺れが画面表示に与える影響を理解していないと実際の海底が細かく凸凹していると解釈したり、魚群は密度が低くまばらだと解釈することになってしまい、魚探からの情報を釣りに活かしきれないことになります。

この時、ボートから垂らした仕掛けを魚群反応が出ているタナに合わせることで釣り上げた魚はマアジでした。そのサイズは20センチメートル前後が主体で、画面内にはアキュフィッシュ機能により赤字で表示されている単体魚のサイズと概ね一致しました。
ボートは潮上から潮下へゆっくり流していたので、魚群反応の上を通過している時はマアジが釣れましたが、反応の上を通り過ぎた後はアタリがなくなりました。潮上へ遡上し、同じコースを流し直すことで釣果を伸ばしました。

マアジは口元が弱い魚なので、強引なリールの巻き上げや堅い竿の使用では口元のハリ穴が広がり、バラシやすくなるので注意が必要です。
特にこの日のように波の影響でボートが揺れる日には、バラシがより発生しやすくなるので、竿は柔らかなものを使用し、仕掛けにはクッションゴムを追加するなどの工夫が必要になるでしょう。

  • マアジを追う vol.5 釣果写真 アキュフィッシュ機能により得られたサイズ情報と釣ったアジのサイズはほぼ一致していた
  • マアジを追う vol.5 水中画像 アジは群れで行動する魚で、その活性は潮流や水温と深い関わりがある

水深10メートル前後の砂地に根(岩礁)が点在するポイントに群れるマアジの映像です。よく見ると画面左側より右方向へ浮遊物が流れていることが観察できます。
これら浮遊物の中には動物性プランクトンが含まれていており、それらを求めてマアジの魚群が待機している状況です。マアジのサイズは12~15センチで、泳がせ(のませ)釣りのエサとして使用するのに丁度いいサイズのものでした。実はこの撮影の直前に私の足元に70センチ級のヒラメが居て、マアジを捕食しようと狙っていたようですが私がその存在に気づかずに近づいたために逃げ去っていきました。
この様にマアジが群れている真上にボートを停止できれば魚群探知機の画面にはマアジの魚群反応が表示され続け、時間の経過とともに画面左方向へ送られていくことで画面の横方向全体に連なった魚群反応として表示されることになります。もしマアジが回遊して立ち去るようなことがあれば反応が途切れることになります。魚が存在しないところへ仕掛けを降ろし続けることがないようボート直下の状況を常に把握する癖を付けましょう。

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。